キャラ

物語 ~Story~

どのような信念を持つかによって、人は武士になるのではない。

どのような信念であれ、その信念を貫いて生きる姿勢こそが、人を武士たらしめるのだ。

― 江戸時代中頃のこと。佐倉藩士である武居新佐と但馬市之丞は、平和な日々の中でも懸命に剣術の修行に励み、武士として少しでも佐倉藩の役に立つことを願っていた。

しかし、突如として佐倉の各地に『骸(むくろ)』と呼ばれるも魔物が現れるようになり、領民たちは恐ろしい混乱に見舞われる。

3年前、先代の藩主が病のために急逝し、子の凛太郎はまだ元服前だったため、現在の藩政は凛太郎の母である千津の方が執っていた。

千津の方からの命を受けて新佐と市之丞は骸との戦いに身を投じ、佐倉藩門外不出の立身流の剣を振るうが、次第に大きな運命のうねりに巻き込まれていく。

立派な武士たらんとする若者たちの信念は、印旛沼の龍伝説と交錯して、佐倉藩の命運を賭けた戦いへ繋がっていくのであった・・・

佐倉に伝わる民話とのリンク

天倫の桜のストーリーは、古くから佐倉に伝わるお話と深く関わっています。
はじめに佐倉の民話を知ってからプレイすると、より楽しく遊ぶことができますよ♪

→ 古くから伝わる佐倉のお話へ

 

「天倫」に込められた“ねがい”

 乱世と泰平のあいだで

物語の舞台となっているのは、江戸時代中ごろの佐倉です。この時には、合戦に明け暮れた戦国時代も終息し、戦乱のない平和な時代を迎えています。この戦乱の時代も終息した江戸時代に、「武士」をめぐる環境は大きく変化しました。

武士は、合戦、戦争を担ういわゆる「戦士」としての役割から、幕府・藩の政治を担う「官僚」としての役割へと大きく転換していくことが求められていったのです。いわば荒くれものばかりの戦国時代の武士たちに、領土の安定的な統治を担わせていくためには、大きな思想・倫理の転換が必要となっていきました。

江戸幕府は、再び下剋上を良しとする戦乱の時代へと突入しないように社会統制を図りました。武士たちには、主君に対する忠誠、幕府や藩といった所属する組織の倫理を最優先とすることを求めたのです。こうした幕府のねらいと合致する学問として、儒学の中でも身分秩序や君臣の上下を重んじる「朱子学」が幕府の学問として採用されました。武士たちが「朱子学」を学ぶことにより幕府が求める社会統制が実現され、武士は幕府・藩の安定的な政治を担う「官僚」として役割を変えていきます。

「上杉謙信による臼井城攻めの図」

佐倉でも臼井城をめぐって2度の大きな合戦がありました。

 武士の信念をめぐって

しかしながら、朱子学だけでは武士が果たすべき社会責任を説明できないとして、これを批判した人物がいます。具体的な生活態度や所作なども含めた実践的な「士道」を説いた山鹿素行(やまがそこう、1622~85)です。

彼は、武士は労働に忙しい農工商に代わって道徳を究め、「天倫」(天から与えられる倫理、社会に正しい道)がおこなわれることのために専念しなければならないと説きました。これは所属する組織の倫理に従うことを求めた朱子学が説く内容と真っ向から対立するものでした。山鹿素行は、幕府から処罰を受け赤穂藩にお預けとなりましたが、これは幕府が推奨する学問である朱子学を批判したためと考えられています。

「武術 立身流」

泰平の世になっても武士たちは武芸に磨きをかけましたが、精神修行の面も強くあったと言えるでしょう。

そして、朱子学の推奨をはじめとする幕府による社会統制が功を奏し、合戦に明け暮れた戦国時代は幕を閉じ、幕府と藩による支配体制は約260年続きました。「パクス・トクガワーナ(徳川の平和)」とも呼ばれ高く評価される長い太平の世が実現したのです。しかしその一方で、個人の倫理よりも幕府・藩の倫理が優先され、固定化された身分社会が続くことにもなりました。

あの有名な「赤穂浪士の討ち入り」は、そうした社会のうねりを映し出したものと捉えることもできるでしょう。この事件は「忠臣蔵」として歌舞伎の演目として人気となり、現在でも繰り返し演劇や映画の題材となっています。また、武士が守るべきものは何かという問題において、当時でも大きな議論を呼んだ事件でした。実は、山鹿素行は赤穂藩にお預けとなった時期に、藩主に請われ教鞭をとり、その気風を生んだ人物でもあると考えられています。

さて、ゲームを進めていくと「天倫の桜」の物語の中でも、藩の命に従うのか、自分が正しいと思う道を信じるのかという葛藤、武士が守るべき信念は何かということが重要な要素となってくることに気がつくのではないでしょうか。武士をめぐる思想の対立が、この物語の中にも通じる部分があるのです。そして、物語の中で登場人物のさまざまな“ねがい”を目にすることでしょう。

時代のうねりの中で、これらの問題は様々な場面で目に見えるかたちであらわれたように思います。また、現代社会の中でも組織の倫理だけでなく、それを超えた倫理を優先する必要がある場面に対峙することがあるのではないでしょうか。この地域創生RPGの制作には、事業活動を通じて地域発展・社会活動に意味のある影響を与えられればという“ねがい”も込められています。

これらの“ねがい”につながる言葉として、この物語のタイトルには、「天倫」という言葉が選ばれました。少し難しい言葉ですが、そうした様々な想いがつまったタイトルなんだと思っていただけるとうれしく思います。

登場人物の信念・ねがいは?

ストーリー中の登場人物の信念やねがいも見どころのひとつです。