山崎 晃裕 選手(陸上競技やり投げ/順天堂大学)
東京2020パラリンピックに続き、パリ2024パラリンピックへの出場が決定した山崎晃裕選手(順天堂大学・市内在住、名前の読み方はやまざきあきひろ)。パラリンピックに向けて、お話を伺いました。
※山崎選手(崎の字は、本来は右上が立の字)
やり投げ転向後、5年で東京2020パラリンピックに出場
元々、身体障害者野球チームに所属していたのですが、東京2020パラリンピックを目指して、やり投げに転向しました。パラリンピックまで5年しかなかったので、野球で培った技術や体力を少しでも活かせる競技が良いと思いました。野球の経験を生かして、ちょっとは、投げられるだろうと思って始めましたが、思っていたより難しかったですね。やり投げを始めて、最初に苦労したのは、練習場所がないこと、そして指導者がいないこと。スポーツを始める時には、この二点が整っていることが一番大事なんです。
自分の場合は、困っている時に、たまたま順天堂大学の卒業生のかたに声をかけていただき、順大で毎週練習していいよと言ってもらえたんです。その当時、自分は、出身地である埼玉県の鶴ヶ島市に住んでいたのですが、大学のある印西市まで2時間半かけて通っていました。東京パラリンピック出場という目標があって、そのための練習場所、指導者が揃っていたからこそ、頑張ることができました。
それからは、パラリンピックを目指して、競技のためにすべての時間を使いました。本当にそれが全てですね。新しい技術・考え方・トレーニングなど、自分が良いと感じたものがあれば、必ず自分から行動して学びに行きました。現在も、月に1度京都まで、元オリンピック選手の指導を受けに行っています。例えば、70m投げたいという気持ちがあっても、自分が取り組むトレーニングが正しいのかはすぐにわかりません。一人ひとり、骨格や体格・体質、腕の長さも違うし、良い記録を出した選手の練習が100%自分に合うかもわかりません。なので、正しいと思ったもの、この人に教わりたいと思ったらすぐに行動して試すようにしています。例えるなら、ジグソーパズルで1ピースを埋めるために、いろいろなピースを試しているような気分ですね。記録が伸びれば正しい。伸びなければ、ダメだったねと言われてしまう世界なので。
東京2020パラリンピックでは7位入賞!上座総合公園でのトレーニングがターニングポイント
東京2020パラリンピックは、コロナ禍だったこともあり、競技場にお客さんがいなかったり、選手村に入るまで2週間程の隔離期間があったり、独特な雰囲気でしたね。自分としては、初出場だったこともあり、自分を追い込みすぎてしまっていたと思います。東京での開催ということもあって、たくさんの人が声をかけてくれたんですけど、周りの期待すらもしんどく感じてしまって。「頑張ってね」という言葉さえも重圧に感じてしまうほどでした。
大会前にも、4年に1回の舞台を目指す重圧を感じ、弱い自分ばかり見てしまっていました。そのような中、コロナ禍で自分自身と向き合う時間が増えました。上座総合公園のグラウンドで先輩と二人で何時間も練習していました。先行きが見えない中に、何のために陸上をやっていたのか、振り返ってみると楽しむことが一番大事。競技を楽しむ。挑戦していることが一番楽しいのに、なんで弱っていたのか、悩んでいたのかと。そこからは吹っ切れましたね。
1度目の反省を生かす2度目のパラリンピック

©小川和行
今回のパリ2024パラリンピックは、自分にとって2度目のパラリンピックとなります。前回大会で感じた課題を解決するためにメンタルトレーニングを取り入れてきました。今回は自然体で臨めると思っています。そこが一番の進化ですね。毎日瞑想をしているのですが、自分の感情・思考とどう向き合うか、イメージする中で理想のパフォーマンスを出して、良い結果を残せた時のことをイメージして臨場感を高めます。不安な気持ちなどネガティブな方向に引っ張られないようにトレーニングしています。
このトレーニングを取り入れてから、自分の感情への向き合い方が全く変わりました。ネガティブな感情に気付き、それを受け入れられるようになったんです。例えば、雨が降っていても雨は自分の力では止められないですよね。自分の感情を天候のように客観視できれば、余裕をもって競技に取り組めるようになります。不安な気持ち、焦りを感じても、俯瞰して自分の感情に気づくことが大事だと考えています。
やり投げは、競技中、自分の気持ちに一人で向き合わなければいけない競技です。試合中のさまざまな感情の中で、いかに思考・感情を客観的に分析できるか。あとは、過去や未来ではなく、とにかく「今」に集中することが大事ですね。ライバルの記録や順位はコントロールできません。余計なことを考えるだけで無駄が生まれます。自分のことだけ、今だけに集中するのが最もパフォーマンスを発揮できる状態なんです。東京の時にはメダリストとの間に壁を感じました。この3年間でメダル争いをできる実力をつけられたと思っています。パリへは、一番になるつもりで戦いに行ってきます。
挑戦することが好き。障害のある子どもたちの目標になるようなアスリートに
パラリンピックを目指す上で、もちろん辛いこともたくさんありますが、自分は根本的に、挑戦することが好きなんです。常にかっこいいアスリートになりたいという気持ちがあって、その舞台がパラリンピック。しっかり結果を残して、山崎晃裕というアスリートの挑戦を多くのかたに見てもらいたいです。
そして、障害のある同じ境遇のこどもたちに道をつくってあげられるような存在になりたいですね。アスリートにとって、障害があることは、競技に必要な技術・体力を高めていく中で不利な点ですが、自分は、障害があってもトップアスリートになるまでスポーツができたり、障害のないアスリートの指導もできたりすると思っています。そうなれば、障害のあるこどもたちの可能性が広がると思います。パラアスリートの価値をもっと高めたいと考えています。
自分がパラリンピックを目指そうと思ったときに、実際に出場する選手の考え方や、どうしてそこまでたどり着けたのかなど、もっと話を聞きたかったんです。競技の向き合い方など見えない部分を気になっていました。経験した方でないとわからないことがやっぱりあると思うんですね。そのような考えもあって、今後は、パラスポーツの競技人口の拡大に向けた活動や、講演などを通じて、自分の経験を積極的に伝えていきたいと思っています。
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更新日:2024年08月14日