都市計画道路勝田台・長熊線(志津霊園関連区間)建設基本計画(平成9年作成)

更新日:2022年06月01日

ページ番号: 5436

目次

序章:計画の位置付け

  1. 計画の目的及び方針
  2. 推移
  3. 今後の事務執行について
  4. 実行手順

1章:墓地等移転・都市計画道路建設事業の促進

  1. 事業期間
  2. 検討課題
  3. [1]状況
    [2]各寺共通課題 法令等の整理
    1. 各寺の財産処分に伴う法令上の手続き
    2. 墓地、埋葬等に関する法律の検討
  4. 補償等
    [1]補償等の基準
    [2]補償の対象
    [3]補償等の方針
    1. 本昌寺及び墓地使用者
      1. 過去の経緯
      2. 基本の考え
      3. 補償の検討
      4. 補償項目
      5. 交渉
    2. 興聖寺、真徳寺、専福寺、隆照寺
      1. 位置的な状況
      2. 過去の経緯
      3. 補償及び交渉
  5. 補償交渉等不成立の場合

2章:道路整備

  1. 現況
  2. 整備計画
  3. 工法

3章:事業費用

概算事業費用

資料

  • 墓地評価基準…(省略)
  • 位置図…(省略)
  • 道路断面図…(省略)
  • 墓地及び周辺完成予想図(省略)

真相解明、損害の回復について(資料)

  1. 事業の概要
  2. 問題要旨
  3. 佐倉市及び市議会における対応
  4. 支払い金額の使途解明及び位置付け等
  5. 訴訟等
  6. 今後の取り組み

序章 計画の位置付け

1 計画の目的及び方針

 都市計画道路勝田台・長熊線(以下「勝田台・長熊線」という。)は、沿線地域における市民の生活環境の向上を図るとともに、国道16号と国道51号とを連絡する広域的な交通網を形成する非常に重要な幹線道路である。
 佐倉市上志津地先における勝田台・長熊線の建設の遅れは、地域住民を始め、市民の日常生活にさまざまな面で多大な支障を生じさせている。勝田台・長熊線を建設するためには、計画区域に所在する志津霊園内本昌寺墓地等の早期移転、 また、志津霊園内及び霊園外に所在する専福寺所有地並びに志津霊園内に所在する5か寺共有地の取得、工作物等の移転が必要である。
 そのため、過去の事務執行に係る反省を基に、全体的な建設基本計画を作成し、事務を執行していくものとする。

2 推移

 佐倉市は、勝田台・長熊線の建設に伴う本昌寺墓地等移転のため志津霊園墓地移転対策協力会(以下「協力会」という。)と昭和63年度に協定を結び、平成元年度までの間に移転補償費として総額約15億3,200万円を協力会に支払った。
 しかしながら、協力会は、受け取った移転補償費について、履行していない契約に対し多額な金銭支払いを行ったり、支払先を説明できない不明金額がある等、ずさんで、不適切な管理をしており、墓地等の移転事業が実施できない状況となっていた。
 このため、佐倉市は、平成4年度から志津霊園移転問題の真相解明及び移転補償費等の使途解明を行ってきた。 平成7年度以来、本問題に対する基本的な解決方法として

  1.  真相解明及び損害の回復
  2.  都市計画道路の早期開通

という2本柱で事務を進めてきた。
1.については、警察・検察における捜査、議会におけるさまざまな調査、職員による直接的な調査が行われてきたところであるが、現在は、訴訟、調停等で損害の回復等に当たっている。
2.については、本昌寺と直接的な交渉を行ってきており、平成8年9月に行った墓地使用者に対する説明会を皮切りに、平成9年3月まで墓地使用者に対する意向調査を行ってきた。意向調査を終了し、90パーセント以上の墓地使用者から道路建設について協力をしてもらえるとの結果になっている。
 さらに、平成9年6月に佐倉市と本昌寺は、今後の事業を進めるための基本的な確認書を取り交わしている。 また、本昌寺以外の4か寺とは、定期的に事実経過を報告するなど折衝をしてきた。

3 今後の事務執行について

 本昌寺墓地移転に係る過去の事務執行手続きについては、佐倉市議会に設置された特別委員会等の調査によりさまざまな問題点があることが明らかになり、佐倉市議会を始め、市民から厳しい指摘がなされているところである。
 基本的には、地方公共団体が行う事務執行の原点を再認識し、地方自治法、財務規則等の関係諸法令を遵守し、事務を進めていかなければならない。
 佐倉市としては、過去の事務執行に対する反省に基づいて、今後の勝田台・長熊線建設事業を進めていくものとする。

4 実行手順

 今後は、次のように1.真相の解明及び損害の回復 2.都市計画道路の早期開通の2本柱の考えに基づいて事務を執行していくものとする。

「都市計画道路早期開通」「真相解明・損害回復」実行手順の説明図

1章 墓地等移転・都市計画道路建設事業の促進

1 事業期間

 今後行うべき道路建設のためには、本昌寺及び墓地使用者との交渉を始めとして、代替地造成事業、墓地等移転事業、都市計画道路建設事業が必要である。また、本昌寺墓地等移転交渉と並行して、志津霊園内5か寺との補償交渉が必要となってくる。
 移転に係る交渉から墓地等移転事業が完了し、都市計画道路が開通するまでの期間は、約60月が必要と想定される。
 その概要については、次の表のとおりである。

本昌寺墓地等移転事業及び都市計画道路建設事業概算月数

本昌寺墓地等移転事業及び都市計画道路建設事業概算月数の図

2 検討課題

[1]状況

 勝田台・長熊線の建設によって、5か寺の経営する志津霊園は、道路南側に興聖寺、真徳寺、専福寺の3か寺、道路北側に隆照寺、道路で分断される本昌寺と、それぞれの寺院墓地が南北に位置することとなる。
 墓地及び境内地の50%以上が道路予定地となるため地区外に移転を予定している本昌寺、墓地及び境内地の一部が道路予定地となる専福寺、参道としての共有地が道路予定地となる5か寺と、勝田台・長熊線建設事業が与える影響は、各寺それぞれ異なる。
 補償対象となる当事者は、宗教法人及び墓地使用者個人である。補償対象物件は、墓地等となるため宗教法人法、墓地埋葬等に関する法律等関係する法令を十分検討し、事務の執行をすることが必要である。
 また、5か寺のうち、4か寺については、すでに佐倉市との契約等が存在しているが、その契約等の内容についても、再検討することが必要である。

志津霊園の概要
項目 用途 地目 地積(平方メートル) 備考

総面積 墓地 17,739 公簿地積
(各寺院墓地) 墓地 13,524 公簿地積
(駐車場緑地) 墓地 3,015 公簿地積
(参道) 墓地 1,200 公簿地積
関係人との契約
関係人 契約等の有無 締結日 備考
法人
興聖寺
あり 平成2年4月26日 なし
法人
真徳寺
あり 平成2年4月26日 なし
法人
専福寺
あり 平成元年12月21日 協力会との協定
法人
本昌寺
あり 昭和63年6月15日 協力会との協定
法人
隆照寺
なし なし
本昌寺墓地使用者392名 なし なし

[2]各寺共通課題 法令等の整理

(1)各寺の財産処分に伴う法令上の手続き

 宗教法人との契約については、宗教法人法上の手続きを経なければならない。各寺との契約等の取り交わしを行う場合、財産処分の伴う行為については、宗教法人法上の手続きを確認した上で行わなければならない。

(2)墓地、埋葬等に関する法律の検討

 勝田台・長熊線を建設するためには、不動産登記上の地目、墓地を公衆用道路とすることとなる。これについて、関係する各寺は、墓地の廃止または変更の許可を受けなければならない。
 また、墓地を設置、変更する場合は、墓地の「環境基準」及び「施設基準」が定められている。今後、施設の基準等については、許可権者である千葉県知事と協議の上、進めていくこととする。
 法令上の墓地の施設基準は、次の表のとおりである。
法令上の墓地の施設基準は、次の表のとおりである。

法令上の墓地の施設基準
施設名 設置 記載条文
便所 設けること
ただし書きあり
条例第8条第6項
使用水の施設 設けること
ただし書きあり
条例第8条第6項
管理事務所 設けること
ただし書きあり
条例第8条第6項
緑地帯 3メートル以上の幅
墓地等の境界に接して境界の内側
条例第8条第1項
障壁 境界から墳墓が見えない
当該墓地の境界から3メートル以上内側
条例第8条第1項
門扉 出入口 条例第8条第2項
通路 1メートル以上の幅員
各墳墓に接続すること
条例第8条第3項
排水路 雨水、汚排水が停留しないこと 条例第8条第5項
緑地帯 障壁の内側
3000平方メートル以上の墓地
条例第9条

(注意)「条例」とは、千葉県墓地等の経営の許可等に関する条例をいう。

3 補償等

[1]補償等の基準

 勝田台・長熊線を建設するための補償等については、下記を基準として行うものとする。

  1. 公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱…(昭和37年6月27日閣議決定)
  2. 一般損失補償基準(千葉県施行の公共事業に伴う損失補償基準)…(昭和41年千葉県訓令第2号)

[2]補償の対象

 事業、関係人、対象物件等は次のとおりである。

 (1)事業名 佐倉都市計画道路事業3・4・15号勝田台・長熊線
  • 事業認可
    • (当初) 昭和62年8月4日 長さ=317.5メートル 幅=16メートル
    • (変更) 平成3年3月19日
  • 事業認可
    (当初) 平成7年12月26日 長さ=157.5メートル 幅=16メートル
(2)関係人
(2)関係人の詳細
関係人 代表者等 所在 包括団体等
法人
興聖寺
和賀晟純 江戸川区南小岩7-20-17 曹洞宗
法人
真徳寺
武田伊作 江戸川区南小岩8-4-5
法人
専福寺
千葉 進 江戸川区松島町4-34-2 真宗大谷派
法人
本昌寺
中村昌之 葛飾区東立石3-9-8 真宗大谷派
法人
隆照寺
小柴正照 葛飾区堀切2-10-5

 本昌寺墓地使用者:392名

(3)対象地
(3)対象地の詳細
現況用途 地目 道路予定地(平方メートル) その他の用地(平方メートル) 地積(平方メートル) 土地所有者
墓地 墓地 1,480 1,295 2,775 佐倉市(墓地管理者本昌寺)
境内地 墓地 326 393 719 佐倉市(建物管理者本昌寺)
墓地 墓地 28 3,356 3,384 専福寺
境内地 境内地 95 1,219 1,314 専福寺(志津霊園外)
参道 墓地 114 1,086 1,200 5か寺
(4)物件
(4)物件の詳細
区分 構造 用途 数量
道路予定地内
数量
その他の用地内
単位
建物 木造瓦葺平屋建 本堂等 1
納骨堂 亜鉛鉄板葺 納骨堂 0 1
墓地 墓石等 185 227 区画
工作物等
立木等

[3]補償等の方針

 墓地は、墓地評価基準によると、寺院墓地、公園墓地、村落墓地、個人墓地に区分される。寺院墓地は、寺院が設置する墓地で、檀家に使用させるものをいう。事業用地の志津霊園内の墓地は、墓地を使用するに当たって、各寺院の門徒となることを条件としていることから、事業用地内の墓地は、寺院墓地として区別し、補償等の方針を決定していくものとする。

(1)本昌寺及び墓地使用者
(1)過去の経緯

 佐倉市と本昌寺との過去の契約等の経緯は、次の表のとおりである。

佐倉市と本昌寺との過去の契約等の経緯
種類 締結日 相手方
協定書 昭和63年6月15日 志津霊園墓地移転対策協力会
合意書 昭和63年6月27日 志津霊園墓地移転対策協力会
合意書 昭和63年6月27日 志津霊園墓地移転対策協力会
合意書 昭和63年6月27日 志津霊園墓地移転対策協力会
補償契約書 昭和63年11月5日 志津霊園墓地移転対策協力会
補償支払契約書 昭和63年11月7日 志津霊園墓地移転対策協力会
土地売買契約書 昭和63年11月10日 本昌寺代理人 協力会会長
補償支払契約書 昭和63年12月22日 志津霊園墓地移転対策協力会
補償支払契約書 平成元年7月20日 志津霊園墓地移転対策協力会
補償契約書 平成2年2月20日 志津霊園墓地移転対策協力会
補償支払契約書 平成2年3月1日 志津霊園墓地移転対策協力会
土地売買契約書 平成2年3月28日 本昌寺代理人 協力会会長
土地売買契約書 平成元年3月28日 本昌寺代理人 協力会会長
(2)基本の考え

【本昌寺】
 墓地の設置や埋葬等の行為は、宗教的感情に根ざすものであり、宗教的平穏の中で行われることが必要である。したがって、本昌寺墓地等の移転は、宗教的感情、社会的慣習等を尊重しながら、寺院墓地としての機能を考慮して協定等を締結し、事業を進めていくこととする。
 また、協定等を締結する場合は、法的に根拠のある手続きにより行っていくこととし、協定等の内容によっては、議会に諮ることが必要である。
 協定等を結んだ後、本昌寺とは、事業を進めていく上で、具体的な契約を必要に応じて行っていくこととする。この場合、履行の確認、金銭の支払い時期等については、法令を遵守した手続きに基づき行っていくものとする。

【墓地使用者】
 墓地使用者とは、平成8年9月以降意向調査を実施したが、未だ具体的な移転交渉に入れない状況にある。今後は、諸条件を整理の上、墓地使用者個人に対し、補償基準による補償項目を個別に交渉し、契約を締結し、物件の移転補償を行っていくものとする。
 また、墓地使用者との交渉、契約の締結、金銭の授受等に関して、墓地使用者が第三者に対し、委任を行う場合が考えられる。この場合は、法的に有効な手続きが行われるよう慎重に対応しなければならず、委任者の意思確認を直接行うなど適切な対応をする必要がある。

(3)補償の検討

 事業用地の取得に当たっては、墓地という特殊性のため、土地の所有者と土地の使用権利者(墓地使用者)という、複数の権利が存在する土地の取得となる。
 土地所有者、土地使用者、固有の権利等、寺院と墓地使用者との関係を十分検討の上、個々の意思を尊重し、補償する必要がある。
 また、本昌寺等の事務執行体制、工事等に対する専門的知識から考えても、本昌寺と墓地使用者に墓地移転事業のすべてを任せることは、難しいものと思われ、佐倉市が今後の墓地移転事業にいかに関与していくかが大きな課題である。
本昌寺と墓地使用者の関係
 本昌寺墓地の使用者となるためには、本昌寺の門徒となることが条件とされている。
 門徒は、冠婚葬祭の内、葬祭の部分を本昌寺に委託し、寺院の経費を負担する義務を有している。
 したがって、本昌寺と墓地使用者に対する補償は、寺院墓地という性格を十分考慮して行わなければならない。

移転工法(移転先)
【構内移転】
 平成9年6月に行った墓地等の現況調査により、志津霊園内本昌寺墓地の勝田台・長熊線予定地内に存在する墓地区画は、185区画であり、その他の用地内の墓地区画は、227区画となっている。道路予定地外には、新しく確保できる墓地区画の収容能力は、100区画程度しかないため、上志津の本昌寺管理墓地内への移転は不可能である。
 また、道路予定地の墓地面積約1,480平方メートル、境内地面積約320平方メートルを志津霊園内の駐車場、緑地内へ移転させることは、本昌寺墓地が志津霊園内に狭小な形で点在してしまうことになり、墓地の機能面から不適当と判断できる。
【構外移転】
 一般的には、墓地の必要性は認められるものの、新たに墓地を設置する場合、近隣地域住民には理解を得られにくい施設となっているのが現状である。墓地を構外移転させる場合には、移転先用地を確保するに当たり、まず移転先の地域住民の理解が必要となる。
 また、現行法令下では、墓地移転の際、墓地のみの整備だけではなく、墓地管理に必要な施設の整備も求められているため、配慮することが必要となる。
過去の実績
 本昌寺は、平成元年から平成3年にかけて佐倉市下志津、畔田地先において約20,000平方メートルの土地を墓地の移転先の用地として取得している。これは、過去に佐倉市から協力会に支払われた補償金により取得したものである。なお、平成9年6月に佐倉市と本昌寺は、下志津、畔田地先を墓地の移転先とする基本確認書を取り交わしている。
 また、本昌寺は佐倉市下志津、畔田地先に墓地を移転させるため墓地経営許可、開発行為許可、農地転用許可を受けており、法的には、移転に係る必要な許可を取得している。
 下志津、畔田の地域については、平成2年度に佐倉市から本昌寺墓地の移転先としての理解を求める地元説明も行っており、地域住民の移転への理解は得られている。
移転先について
 上記の検討の結果及び過去の実績を総合的に判断し、本昌寺墓地の移転先は、佐倉市下志津、畔田地先を予定する。
構外移転における補償の考え方
 構外移転においては、事業用地の物件の移転を行おうとするとき、現行法令下において、墓地経営のために必要な施設の設置等を求められる場合がある。事業用地内だけの物件の移転を補償したとき、移転先で法令に適合しないということは、移転不可能ということになる。したがって、必要最小限度において、施設設備等の設置の補償、いわゆる、現墓地の機能を代替の墓地に確保することをも考慮に入れ、墓地移転を行っていくこととする。

(4)補償項目

本昌寺及び墓地使用者に対する補償項目は、次の表のとおりである。

本昌寺及び墓地使用者に対する補償項目
区分 内容説明
(1)土地 類似取引価格を基準とし、取得する土地の位置、形状、環境、収益性その他一般取引における価格形成上の諸要素及び墓地評価基準での評価を総合的に比較考慮して、算定した価格で補償する。
(2)墓碑類移転料 墓地の移転に伴い、現墓地から移転先へ墓石、外柵等を移転させる費用を補償する。
(3)遺体遺骨類移転費 墓地移転に伴う埋葬遺体を改葬するための費用で、遺骨の処理費を補償する。
(4)移転先必要施設整備費 移転先を墓地として使用するために諸法令、行政指導等で最低限度設置を求められる施設を整備する費用を補償する。
(5)立竹木等移転料 立竹木等を移転先に移植する費用を補償する。
(6)工作物等移転料 工作物等を移転先に移植する費用を補償する。
(7)本堂等建物移転料 当該寺院が所有する本堂等建築物を移転先に移転する費用を補償する。
(8)弔祭料 墓地の改葬を行うに当たって、墓地使用者が必要となる儀式に要する費用を補償する。
(9)祭祀料 寺院が宗教的な施設等を移転するに当たり、必要となる儀式に要する費用を補償する。
(10)移転雑費 墓地の移転に伴い必要となる移転先選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、移転の通知に要する費用、就業できないことにより生ずる損失相当額等の諸雑費を補償する。
(5)交渉

 本昌寺及び墓地使用者に対する交渉は、原則的に[3]補償等の方針に基づき行っていく。
 具体的な交渉項目としては、

  • イ) 事業執行の分担の件
  • ロ) 事業費用の件
  • ハ) 協力会が取得した移転代替地の件
  • ニ) 佐倉市が取得した土地の件
  • ホ) 佐倉市が行っている訴訟等の件
  • ヘ) 本昌寺が所有している1億5千万円の件
  • ト) 事業を進めるための担保の件
  • チ) その他必要な事項

が考えられる。

(2)興聖寺、真徳寺、専福寺、隆照寺
(1)位置的な状況

 志津霊園の施設と勝田台・長熊線との関係は、次の表のとおりである。

志津霊園の施設と勝田台・長熊線との関係
共同管理施設
施設
共同管理施設
位置
単独管理施設
施設
単独管理施設
位置
緑地 道路北 興聖寺墓地 道路南
駐車場 道路北 真徳寺墓地 道路南
管理事務所 道路北 専福寺墓地 道路南
便所 道路北 本昌寺墓地 道路用地
囲い柵 霊園周囲 隆照寺墓地 道路北

 勝田台・長熊線の建設により、現在の志津霊園を管理、運営している施設が道路北側に位置することとなる。
 したがって、志津霊園が勝田台・長熊線によって南北に分断されるという事実と、分断される南北の墓地を各々独自に管理する施設の整備という点に十分配慮する必要がある。
 また、分断される南北の墓地を連絡する横断歩道等の施設について検討が必要となる。
 南北に分断される墓地を各々利用する場合には、墓地管理に必要な法令上の施設として、管理事務所、便所、使用水がある。

(2)過去の経緯

 佐倉市と興聖寺、真徳寺、専福寺及び隆照寺との過去の契約等の経緯は、次のとおりである。

(ア)興聖寺
種類 締結日 相手方
協定書 平成2年4月26日 宗教法人曹洞宗興聖寺
補償支払契約書 平成2年4月26日 宗教法人曹洞宗興聖寺
(イ)真徳寺
種類 締結日 相手方
協定書 平成2年4月26日 宗教法人真宗真徳寺
補償支払契約書 平成2年4月26日 宗教法人真宗真徳寺
(ウ)専福寺
種類 締結日 相手方
協定書 平成元年12月21日 志津霊園専福寺墓地対策協力会
協定書 平成元年12月21日 志津霊園専福寺墓地対策協力会
協定書 平成元年12月21日 志津霊園専福寺墓地対策協力会
補償契約書 平成元年12月21日 志津霊園専福寺墓地対策協力会
追加補償契約書 平成2年8月29日 志津霊園専福寺墓地対策協力会

(エ)隆照寺
 契約等は存在しない。

(3)補償及び交渉

 過去に行ってきた志津霊園の5か寺との契約等については、参道となっている共有地部分についての契約等が存在していない。
勝田台・長熊線は、5か寺共有の参道(地目・墓地)と専福寺所有地を取得しなければ開通させることはできない。
 本昌寺以外の4か寺に対する執行方針としては、勝田台・長熊線の整備に伴い南北に分断される志津霊園の今後の管理形態、利用状況に十分配慮しながら補償等を執行することとする。
 また、佐倉市が必要とする事業用地について、和解等の方法を視野に入れ、各寺と次の表を概要として交渉を行い、契約等の内容によっては、市議会に諮ることが必要である。

補償及び交渉
区分 交渉内容
土地
  1. 事業用地の所有権について
  2. 道路北側の5か寺共有地について
墓地施設 存続する墓地の施設の設置等について
  1. 管理事務所
  2. 便所
  3. 駐車場
  4. 障壁
  5. 緑地
  6. 使用水の施設
  7. 排水施設
雑費等 祭祀料、墓地廃止許可等に係る費用等について
4 補償交渉等不成立の場合

 5か寺との補償交渉等が整わず、道路開通の見通しが立たなくなった場合は、この建設基本計画書に基づく事業執行は、中止することとなる。この場合においても都市計画道路が果たす役割から、道路機能の確保は、別途検討していかなければならない。

2章 道路整備

1 現況

 勝田台・長熊線は、佐倉市を東西に結ぶ幹線道路であり、昭和62年8月に本区間317.5メートルについて、都市計画法の事業認可を取得し、平成3年度までに延長160メートルの整備が完了した。この結果、未整備区間は、志津霊園を含む157.5メートル(霊園区間約122メートル)である。
 霊園区間約122メートルの部分において、勝田台・長熊線区域内(幅員16メートル)には本昌寺管理の墓地185区画、本昌寺志津支院建物1戸、本昌寺所有工作物、立木及び専福寺所有墓地(面積約28平方メートル)があり、さらに5か寺が共有している参道(面積約114平方メートル)、囲い柵が存在し、いずれも移転補償対象である。
 また、霊園区間以外の35.5メートルの区間については、一部専福寺所有の未買収地(面積約95平方メートル)が存在し、その他は買収済の土地となっている。

2 整備計画

 都市計画道路勝田台・長熊線は、幅員16メートルで計画決定されており、幅員構成は、車道9メートル(4.5メートル×2)、歩道7メートル(3.5メートル×2)である。歩道3.5メートル内には、1.5メートルの植樹帯を設置する。
 道路照明、雨水排水、水道、電気、ガス、電話等公共公益施設の管理者と協議し、都市計画道路勝田台・長熊線の道路建設工事に合わせて各管理者による整備工事を進める。
 開通に伴い都市計画道路と交差する既存の道路については、交通量や道路利用形態に配慮し、必要に応じて交通安全施設の設置をする。
 また、勝田台長熊線は志津霊園を南北に分断することとなるため、道路完成後の志津霊園墓地の環境に十分配慮し、都市計画道路と墓地との緩衝緑地及び障壁の設置に努め、墓地内に雨水が停留しないよう配慮する。

3 工法

 国道296号のバイパス要素の強い本路線は、1日当たりの交通量が10,000台を超えることが予想される。整備完了区間の舗装構成は、国道と同じような構造で施工されており、今回の区間も同様の設計で実施する。

3章 事業費用

1 概算事業費用

 今後、本昌寺墓地等の移転を始めとして、4か寺の協力を得ながら、勝田台・長熊線を建設するために必要とされる事業費は、概算で20億円と考えられる。
 その概要については、次の表のとおりである。

概算事業費算出表
支出項目 金額
代替地設計・造成等費用 820,000千円
墓地使用者等補償費用 850,000千円
その他5寺関係費用 180,000千円
道路建設費用 150,000千円
概算事業費用 2,000,000千円
財源内訳表
項目 金額 備考
予算措置
一般財源
1,570,000千円 なし
予算措置
勝田台・長熊線基金
280,000千円 協力会返還金・寄附金(平成9年当時の金額)
本昌寺所有金 150,000千円 なし
合計 2,000,000千円 なし

(資料)志津霊園本昌寺墓地移転問題の真相解明及び損害の回復について

1 事業の概要

 都市計画道路勝田台・長熊線(以下「勝田台・長熊線」という。)は、沿線地域における市民の生活環境の向上を図るとともに、国道16号と国道51号とを連絡する広域的な交通網を形成する非常に重要な幹線道路である。
 佐倉市上志津地先における勝田台・長熊線の建設の遅れは、地域住民を始め、市民の日常生活にさまざまな面で多大な支障を生じさせている。勝田台・長熊線を建設するためには、墓地及び境内地の50%以上が道路予定地となる志津霊園内本昌寺墓地等の地区外移転が必要であった。

2 問題要旨

 佐倉市は、勝田台・長熊線の建設に伴う本昌寺墓地移転のため、志津霊園墓地移転対策協力会(以下「協力会」という。)と昭和63年度に勝田台・長熊線築造に伴う費用負担協定を結び、平成元年度までの間に移転補償費として総額約15億3,200万円を協力会に支払った。
 しかしながら、協力会は、受け取った移転補償金について、履行していない契約に対し多額な金銭支払いを行ったり、支払先を説明できない不明金額がある等、ずさんで、不適切な管理をしており、墓地等の移転事業が実施できない状況となっていた。
 このため、佐倉市は、平成4年度から志津霊園移転問題の真相解明及び移転補償費等の使途解明を行ってきた。
 この結果、佐倉市が協力会に支払った金銭の一部約2億5,500万円が返還されたところであり、また、目的を達成していないと思われる部分については、訴訟等により損害の回復を図っている。

3 佐倉市及び市議会における対応

 佐倉市は、平成4年度から道路建設課において事件の解明に取り組み、平成6年度に市長を本部長とする志津霊園対策本部を設置した。その後、平成7年1月から、志津霊園対策室を設けて、真相解明に努めてきた。
また、佐倉市議会では平成5年度から地方自治法第98条、第100条の権限を持つ特別委員会等を設置し、問題解決のための調査、提言に取り組んできた。

その概要は、次の表のとおりである。

事業の概要
特別委員会の名称 期間 報告、提言等の概要
市政執行に係わる調査特別委員会(98条) 平成5年6月~平成6年3月まで
  1. 真相の糾明を司直の手に委ねる
  2. 市長並びに市当局の責任を市民の前に明らかにする
志津霊園移転問題調査特別委員会(100条) 平成6年7月~平成6年12月まで
  1. 市民の信頼回復
  2. 志津霊園移転問題の解決
  3. 協力会方式の見直し
  4. 道路問題の解決
  5. 関係者の責任問題
志津霊園調査特別委員会 平成7年7月~平成7年12月まで
  1. 道路開通のための総合計画の早期策定
  2. 市支出金並びに真相の解明
  3. 墓地使用者等の100%同意書なしには予算措置は認めない
志津霊園移転問題調査特別委員会 平成8年6月~ 17回の委員会開催(平成9年9月1日現在)。公共事業に伴う墓地移転事例の調査(熊本県・大分県)

4 支払い金額の使途解明及び位置付け等

 佐倉市議会に設置された特別委員会による調査、市職員による直接の調査、交渉により移転補償金の使途については、次の表のように確認された。
 また、協力会への支払金額約15億3,200万円の内、約2億5,500万円については協定書の一部合意解約に基づき、平成7年12月に協力会から佐倉市に返還されている。

支払い金額の使途解明及び位置付け等
支払先、支出内容等 確認金額
本昌寺への支払い 1億5,000万円
石材店への支払い 4億円
測量会社への支払い 約2,000万円
土地買収費 約3億1,300万円
協力会経費 約1,100万円
建設会社への支払い 約2億4,200万円
協力会からの返還金 約2億5,500万円
確認金額合計 約13億9,100万円

(注意)確認金額とは、協力会の支出報告に対して、相手方の受領確認がとれている金額である。

5 訴訟等

 佐倉市は、平成4年度から真相の解明、損害の回復に取り組んできたが、佐倉市議会における特別委員会の報告、提言を受け、また、捜査権等の強制的な権限がなく限界があるため、刑事告発を行うとともに、民事訴訟、民事調停等で真相の解明、損害の回復に努めてきた。
 刑事事件としては、平成6年6月業務上横領罪として、佐倉市は告発を行った。平成8年3月に不起訴処分となったが、佐倉市は、処分を不服として、千葉検察審査会に審査を申し立てた。検察審査会の議決結果は、不起訴不当となり、千葉地方検察庁で再捜査が行われたが、平成9年5月、千葉地方検察庁は時効完成、嫌疑不十分を理由として不起訴処分の決定を行った。
 民事事件としては、民事訴訟、民事調停を行っており、主な内容については、使途不明金に係る損害賠償請求、事業請負業者に係る未履行部分の代金返還請求である。
 その概要については、次の表のとおりである。

訴訟等:刑事
事件名等 審理等の機関 提起等の日 相手方等 経過・結果
告発 千葉県警察 平成6年6月10日 協力会前会長・協力会前副会長 平成9年5月19日不起訴処分
千葉地方検察庁 なし なし なし
訴訟等:民事
事件名等 審理等の機関 提起等の日 相手方等 経過・結果
損害賠償請求事件 千葉地方裁判所 平成7年12月26日 協力会前会長・協力会前副会長 訴訟中
請負代金返還申請 中央建設工事紛争審査会 平成8年7月5日 建設会社A 調停中
請負代金返還請求調停申立事件 千葉簡易裁判所 平成8年7月8日 石材店H 平成 9年1月28日不成立
建物収去土地明渡請求事件 千葉地方裁判所 平成8年12月27日 石材店H 訴訟中
請負代金返還請求事件 千葉地方裁判所 平成9年2月3日 石材店H 訴訟中

6 今後の取り組み

 今後は、真相の解明、損害の回復については、民事訴訟等によって進めていくものとする。また、協力会の清算、協定等の解約等についても、法的な問題を検討しつつ、本昌寺等と交渉を進めていかなければならない。基本的には過去の協定等の解約、清算等は、適正な権利者と新たな協定等を締結する中で整理し、裁判等で結論が出たときに最終的に協力会の解散を行っていくものとする。
 また、訴訟等により返還金等が生じた場合は、その金員は、勝田台・長熊線基金に積み立てを行っていくこととする。

この記事に関するお問い合わせ先

[土木部] 道路建設課
〒285-8501 千葉県佐倉市海隣寺町97
電話番号:043-484-6155
ファックス:043-486-2505

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